学校の帰り道。


 いつもの坂道を、たてぶえを吹きながら帰った。


 私は不器用だから、ちゃんと音階を吹くことだって難しい。


 いつもラの音が出せなくて苦労する。


 一度もキレイな音を出せたことがないから、毎日練習しているけど、全然音はキレイにならないし、指も思ったとおりに動いてくれない。


 これで曲をやろうなんて、絶対無理だと思う。


 でも、毎日練習した。やらないであきらめるのは嫌いだから。


 もちろん家に帰っても練習した。


 だってもうすぐたてぶえのテストだし。


 家にはおばあちゃんしかいないし、おばあちゃんは耳が遠いからいくら練習しても平気だった。


 テストの日、すごく緊張して頑張ってたてぶえを吹いた。


 そろばんの試験なんて緊張もしないけど、苦手なものは緊張するなとさすがの私も思った。


 サングラスをかけたあやしい担任は、おまえ、練習してこなかっただろうと言った。


 しましたと言ったら怒られた。


 ピアニカの時にも言われたけど、私は嘘は言ってないのに。


 でも、信じてもらえないのはわかっていたからもう言わないで座った。


 結果じゃなくて、頑張ったことに意味があるとかなんとか、そんなことを担任は言っていた。


 わたしは、結果が出せない努力は無意味なんだなと思った。


 毎日練習したことを、誰かにいうのはやめた。






 だから楽器は嫌い。






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